当院では、あらゆる体調不良の根本的な原因として「冷え」を非常に重視しています。
当院が考える「冷え」とは、単に「身体が冷たい」という感覚だけではありません。私たちの身体に本来備わっている「生命力」が低下し、熱を作る力(産熱力)、熱を巡らせる力(巡熱力)、熱を外に逃がす力(放熱力)のバランスが崩れてしまった状態を指します。
前回は「生命力と熱、そして体温調節の関係」について、西洋医学の視点からお話ししました。
今回は、東洋医学の視点からお話しします。
東洋医学(中医学)における体温調節は、五臓(肺・心・肝・脾・腎)が互いに連携し、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい/津液)」を生成・循環・排泄させることで維持されています。
東洋医学では、五臓がお互いにバランスよく働いて気・血・水のバランスを整えることこそが、すなわち「生命力が強いこと」を意味します。
身体の中で行われている「産熱(熱を作る)」「巡熱(熱を配る)」「放熱(熱を逃がす)」という3つの仕組みと、それぞれに深く関わる五臓の働きについて分かりやすく解説します。
1. 産熱(熱を作る)に関わる五臓:脾・腎
体温調節の基本となる「熱を作る働き」は五臓それぞれが持っていますが、特にその力が強いのは「脾(ひ)」と「腎(じん)」です。
脾(ひ):後天の本(こうてんのほん)
飲食物の消化吸収を促す臓器です。食事から得られた栄養素(水穀の精微)を、身体を動かすためのエネルギーである「気」と「血」に変えます。このエネルギーが作られる時に「産熱」が起こります。
腎(じん):先天の本(せんてんのほん)
親から受け継いだ生命エネルギーを貯蔵する場所です。生命力の源である「精(せい)」を蓄え、身体を根本から温める「火種」としての役割を担っています。
2. 巡熱(熱を運ぶ)に関わる五臓:肝・心
産生された熱を全身の隅々まで届ける「巡熱(熱のコントロールと運搬)」には、「肝(かん)」と「心(しん)」が深く関わっています。
肝(かん):疏泄(そせつ)作用と蔵血(ぞうけつ)作用
気・血・水を滞りなく伸びやかに巡らせる「疏泄作用」を司ります。また、血液を貯蔵して活動量に応じて血流量を調節する「蔵血作用」も持ちます。肝がスムーズに働くことで、熱が一部にこもることなく、必要な場所へ適切に分配されます。
心(しん):心主血脈(しんしゅけつみゃく)
全身の血管と血液循環をコントロールするポンプの役割を担います。脾や腎で作られた熱は、この心の働きによって血液とともに全身の隅々まで運ばれます。
3. 放熱(熱を逃がす)に関わる五臓:肺
体温の上昇を抑える「放熱」を主導するのは、体表のバリアや発汗をコントロールする「肺(はい)」です。
肺(はい):宣発(せんぱつ)作用
呼吸による放熱だけでなく、気や津液(水分)を体表へと押し出す「宣発作用」を司ります。肺は体表の「皮毛(ひもう)」や汗腺の開閉をコントロールしており、体内に熱がこもると水分を汗に変えて体表から放出します。このとき、気化熱によって体温を下げます。
すべての五臓はつながっている
ここまで「産熱・巡熱・放熱」に分けて五臓を説明してきましたが、これらは決して独立しているわけではありません。
例えば「心」は、五行説で「火」に属するため強力な「産熱」の源でもあります。同時に、汗は「心の液(しんのえき)」と呼ばれており、心は肺と協力して「放熱」を行うなど、一つの臓器が複数の役割を兼ね備えています。
このように、五臓がバランスよく連携し、気・血・水の巡りを整えることこそが、確かな体温調節力、すなわち「強い生命力」へとつながるのです。
なんとなく身体が冷える、熱がこもりやすいなど、体温調節の乱れを感じる方は、五臓のバランスが崩れているサインかもしれません。気になる症状がある方は、ぜひ当院にご相談ください。





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