【東洋医学から観た体温調節】五臓六腑の連携と、熱をコントロールする「三焦」について

当院では、あらゆる体調不良の根本的な原因として「冷え」を非常に重視しています。

当院が考える「冷え」とは、単に「身体が冷たい」という感覚だけではありません。私たちの身体に本来備わっている「生命力」が低下し、熱を作る力(産熱力)、熱を巡らせる力(巡熱力)、熱を外に逃がす力(放熱力)のバランスが崩れてしまった状態を指します。

東洋医学(中医学)における体温調節は、五臓(肺・心・肝・脾・腎)や六腑(ろっぷ)が互いに連携し、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい/津液)」を生成・循環・排泄させることで維持されています。

五臓六腑がお互いにバランスよく働いて気・血・水の巡りを整えることこそが、すなわち「生命力が強いこと」を意味します。

今回は、身体の中で行われている「産熱(熱を作る)」「巡熱(熱を配る)」「放熱(熱を逃がす)」の仕組みと、そのシステム全体を統合してコントロールする目に見えない器官「三焦(さんしょう)」について分かりやすく解説します。

 

1. そもそも「三焦(さんしょう)」とは?

東洋医学には「五臓六腑(正確には六臓六腑)」という言葉がありますが、その中に「三焦」と呼ばれるものがあります。

これは六腑の一つですが、胃や大腸のように目に見える形があるものではなく、「名称があって形のない腑(有名無形の腑)」として形がないことが最大の特徴です。

形がないからといって、働きがないわけではありません。三焦は全身の「気(エネルギー)」と「水(水分・津液)」が巡る通路・水路を指し、生命維持にとって非常に重要な役割を担っています。

三焦は、身体のどの領域に位置するかによって、以下の3つに分けられます。

上焦(じょうしょう):横隔膜から上の領域(心・肺が属する)
主な働きは呼吸を司ることです。心と肺によって栄養分や気血を全身に巡らせます。

中焦(ちゅうしょう):横隔膜からお臍のあたりまでの領域(脾・胃が属する)
主な働きは消化器全般です。飲食物を消化吸収し、エネルギーへと変換します。

下焦(げしょう):お臍から下の領域(肝・腎・小腸・大腸・膀胱などが属する)
主な働きは排泄です。栄養を吸収した後の不要な水分や固形物を体外に排出します。

このように三焦は、飲食物を消化吸収してエネルギーに変え、老廃物を排泄し、体内の水分をコントロールして気血を全身に巡らせる統合的な役割を果たす腑なのです。

2. 三焦から観た「体温調節」のシステム

この三焦は、体温調節における「産熱・巡熱・放熱」のシステム全体をコントロールする重要な役割も持っています。それぞれのプロセスと三焦の関係性を見ていきましょう。

① 産熱(熱を作る):お腹(中焦・下焦)が担当

東洋医学において、熱はお腹で作られます。

中焦の産熱: 脾胃(消化器系)が飲食物を消化・吸収し、生きるためのエネルギー(水穀の精微)に変えます。これが日々の活動熱や体温のベースになります。

下焦の産熱: 腎(命門の火)に蓄えられている、生命活動の根本的な熱源「元気(げんき)」が関わります。ここが生命のボイラー室のような役割を果たしています。

② 巡熱(熱を運ぶ):上・中・下すべてが担当

作られた熱を全身へ適切に配分し、温度を均一化します。

全身への熱の配分: 下焦で作られた根本の熱(元気)は、三焦という通路を通って、中焦・上焦、そして身体の隅々(内臓から皮膚の表面まで)へと運ばれます。

温度の均一化: 三焦の巡りが良いと、体全体の温度が一定に保たれます。もし三焦のどこかが詰まると、熱が上部に停滞して「のぼせ」が起き、下半身へ熱が届かなくなって「冷え」が生じる「冷えのぼせ」の原因になります。

③ 放熱(熱を逃がす):上焦が担当

皮膚の毛穴を開閉して、熱を外に逃がします。

衛気(えき)のコントロール: 上焦(心・肺)は、三焦を通じて運ばれてきた防衛エネルギー「衛気」を皮膚の表面に散布します。

毛穴の開閉(汗孔の調節): この衛気がバリアのように働き、現代医学でいう自律神経のように毛穴(汗孔)を開閉します。体温が上がりすぎたときは、三焦から供給された「水液」を汗として皮膚から蒸発させ(放熱)、寒いときは毛穴を閉じて熱の放出を防ぎます。

すべての五臓六腑はつながっている

ここまで「産熱・巡熱・放熱」に分けて五臓や三焦を説明してきましたが、これらは決して独立しているわけではありません。

例えば「心」は、五行説で「火」に属するため強力な「産熱」の源でもあります。同時に、汗は「心の液(しんのえき)」と呼ばれており、心は肺や三焦と協力して「放熱」を行うなど、一つの臓器が複数の役割を兼ね備えています。

このように、五臓六腑がバランスよく連携し、三焦という通路を通じて気・血・水の巡りを整えることこそが、確かな体温調節力、すなわち「強い生命力」へとつながるのです。

なんとなく身体が冷える、熱がこもりやすい、冷えのぼせが辛いなど、体温調節の乱れを感じる方は、三焦の巡りや五臓のバランスが崩れているサインかもしれません。

気になる症状がある方は、ぜひ当院にご相談ください。あなたに合わせた鍼灸施術で、身体の芯から巡りを整えるお手伝いをいたします。

文責 伝馬町鍼灸院 院長 鍼灸師 川添登

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