体に熱を取り入れて熱を巡らせる
私たちは、熱を取り入れることで体の熱の巡りを改善することができます。熱を取り入れるには、温かいものを体の外側から、または内側から取り入れます。
熱を体の外側から取り入れる
熱を体の外側から取り入れる方法は、入浴のように全身から取り入れるやり方とお灸のように体の一部分から熱取り入れるやり方とがあります。体の外から熱を取り入れるやり方は以下のようなものがあります。
1.入浴
入浴は、体の外から熱を取り入れる最適な方法の一つです。入浴には、温熱効果により熱の巡りが改善されるだけではなく、また水圧による血液の循環が改善し、全身の細胞に必要な酸素、水分、栄養素が届けられ代謝が上がり、体の老廃物除去が促進され、むくみなどの症状を緩和することができます。
熱めのお湯は交感神経を優位にして、ぬるめのお湯は副交感神経を優位にします。
入浴は、湯温や、浸かる時間、浸かる部位によって効果が異なります。
また、湯に、身近な植物などを入れ薬湯にしたり、入浴剤を入れることにより、体が温まりやすかったり、入浴後にも温かさが持続します。
入浴の詳しい説明は以下のページを参考にしてください。
入浴について
2.温泉
温泉は観光目的だけではなく、古来から温泉地に長期間滞在して入浴したり、温泉水を飲んで、怪我や病気を治すことを目的とした「湯治」が行われています。現在では、温泉療法として化学的研究が行われています。
温泉の効用
温泉の効用は、お風呂と同様に温熱効果、浮力効果、水圧効果や自律神経に与える影響の他に転地効果、温泉に含まれる化学的効果が考えられます。
転地効果は、普段の日常生活から離れ、自然あふれる環境に身を置くことで心と体を癒すこです。これは、ストレス解消にもなり熱の産生が高まります。
また、地域によって温泉に含まれる成分が異なり、それによって体に与える影響変わります。
温泉の泉質には、単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射線泉がありますが、冷え症に効果的な泉質は、単純泉、塩化物泉です。
3.サウナ風呂
サウナ風呂には、乾式とミストサウナのような湿式があります。通常は乾式で、室内は80~100℃ありますが乾燥しているため火傷を起こすことはありません。
サウナには、新陳代謝を高めたり、抹消血管が拡張して、熱の巡りが改善して、冷え症が改善する他、ストレス解消、疲労回復、血液の循環促進、神経の鎮静、老廃物の除去、ヒートショックプロテインの増加などの効用があります。
サウナ風呂に入った直後に冷水につかるのは、急激な血圧の変動により循環器に負担をかけ、高血圧、不整脈、心臓に疾患を持っている方は危険ですのでお勧めできません。
また、水風呂でかえって体が冷えてしまうことがあるので注意が必要です。
冷え症の方には、めまいを起こす可能性があります。冷え症の方には、低温サウナでじっくり温め、涼しい所でクールダウンすると良いでしょう。水分の補給もこまめに行います。
4.岩盤浴
岩盤浴は温めた天然石や加工した岩石の上に横になって、遠赤外線を利用して体を温めるサウナ形式の方法です。効果はサウナと同じですが、サウナの場合、体表面から温めますが、岩盤浴は遠赤外線で体を温める為、からだの内側から温めると言われています。
5.よもぎ蒸し
よもぎ蒸しは、よもぎを煎じて下半身を蒸す韓国に伝わる民間療法です。高密度の生地のマントを首から下を覆い、座っているいすの下からヨモギや生薬を煮出してその蒸気で下半身を中心に体を温める方法です。
その効果は、冷え症の改善の他、婦人科系の疾患の予防、改善、老廃物の除去、リラックス、ダイエット、美肌効果などがあるそうです。
大量の汗をかきますが、シャワーやお風呂を浴びない方が良いそうです。
6.酵素風呂
酵素風呂は、発酵して高温になったおがくずや米ぬかなどの中に顔以外の体を埋め、体全体を温める方法です。
お風呂と違い、水圧がかかりません。
効果として、遠赤外線温熱効果による血行の促進と体温上昇、冷え症の改善、体表からのミネラルとビタミンの吸収による新陳代謝の向上、免疫力を高める、美肌効果があるそうです。
7.お灸
お灸はもぐさに火をつけ、皮膚に直接乗せて温める、もしくはもぐさの間に物を介在したり空間を作って温める方法です。
皮膚は、内臓の鏡であり、内臓の不調は皮膚に現れます。ツボはその反応点で、適度な温度刺激をツボに与えると、その刺激が内臓にまで届き内臓の働きが活発になり、産熱を促します。
また、お灸の熱が脳にある自律神経の中枢でもある視床下部に温度刺激が伝わることによって血管が拡張し、熱の巡りが改善します。
現在では、台座のついたお灸が普及していますので、台座のついたお灸の仕方について、以下のページを参考にしてください。
湧泉(ゆうせん)、太谿(たいけい)、三陰交(さんいんこう)は、冷え症によく使われるツボです。以下のページを参考してお灸をしてみて下さい。
8.足湯・手湯
足湯・手湯は、足の一部、手の一部をお湯にしばらくの間につける、体の外側から熱を取り入れ、熱の巡りを改善する方法の一部です。
足湯・手湯は、入浴と違い以下のメリットがあります。
1.衣服を全部脱がないので、手軽にできる。
2.お湯の量が少なくて済むので、経済的である。
3.心臓などの循環器に問題のあるひとでも手軽にでき、安全である。
足湯・手湯のやり方は以下のページを参考にして下さい。
9.湯たんぽ
湯たんぽは古くから使われている金属、樹皮、陶器などでできた体を温めるためにお湯を入れる暖房容器です。
湯たんぽは、部屋を温めるエアコンと違い、高熱費が罹ったり、空気を乾燥させることなく、衣服の上から体に密着させるため、体の一部を集中的に熱を補うので、便利で最適な方法の一つです。
湯たんぽを掛布団と敷布団の間に入れて、寝る時だけ使用するのはもったいないです。日中でも積極手的に使いましょう。
温める部位は、主に、太腿、お腹、腰、仙骨あたりです。
湯たんぽには、金属、陶器、ゴム、プラスチックなどの材料でできたものがありますが、最近では、お湯を入れずに使える充電式、レンジで温めるタイプもあるそうです。
湯たんぽがない場合はペットボトルにお湯を入れて、湿ったタオルでペットボトルを巻き、ビニール袋に入れて輪ゴムで留めて作ることもできます。
10.カイロ
カイロは化学発熱体や蓄熱材等を内蔵して、携帯として身体を温めるグッズです。湯たんぽとは違い、お湯もいらず、携帯して移動できるので外出した時に身に着けられるのでとても便利です。
カイロには、使い捨てカイロを始め、ハクキンカイロ、ハクキンカイロ、電子レンジ加熱カイロ、エコカイロなどがあります。
使い捨てカイロは、ミニサイズ、靴下用、肩用、座布団サイズ、また貼りつけるものと貼り付けしないものがあります。
温める体の部位は、「筋肉の集まっている部位」です。筋肉には、血管が多く集まり、熱を巡らせるのに、効率の良い場所です。
お腹、腰回り、両肩甲骨の間、太腿、二の腕の後ろ側などに貼ると効果的です。また、足が冷えやすいので、靴下用を利用するのも効果があります。
11.ヘアードライヤー
ドライヤーは髪の毛を乾かすだけではなく、温風を利用して体を温める事が可能です。
ツボのあたりを温めると、内臓へも熱のめくりが良くなります。
手首、足首、首など「首」のつくところは、ツボが多く集まっていて、しかも表面に近い所を動脈が走っていますので、そこを温めると効率的に体を温めることができます。
12.ホットパック
ホットパックは、整形外科のリハビリ目的で、関節痛や筋肉痛を温めて緩和するための温熱グッズです。湿熱と乾熱があり、湿熱の方が熱伝導率が高く、より体を温めることができます。
カイロと同じように温める部位は、「筋肉の集まっている部位」です。
家庭でできる簡単なホットパックの作り方をご紹介していますので、こちらを参考にして下さい。
熱を体の内側から取り入れる
熱を内側から取り入れる方法には、飲食物、漢方薬などがあります。
1.飲食物
飲食物について、体を温めるには、飲食物の成分と温度にわけられます。成分については「熱を産生する観点から」の⑤の食事の摂取をご覧ください。ここでは飲食物の温度についてです。
飲食物の温度は、熱の産生のみならず、熱の巡りにも影響します。温かい飲食物は体の内側から温め、熱の巡り良くします。
冷たい飲食物を摂れば、体は冷えた飲食物の温度を上げる為、不必要なエネルギーを消耗してしまいます。また、胃腸が冷やされ消化吸収力が遅くなります。
食べ物
体の内側から熱を取り入れるには、できるだけ、常温以上の温度のものを食べましょう。できれば加熱調理したものを食べましょう。
野菜は煮物などが良いでしょう。生野菜を食べる時は、酢やコショウなど冷えを中和するようなドレッシングをかけましょう。
飲み物
飲み物も食べ物と同じで、冷たいものをできるだけ避けます。できるだけ常温以上の温度のものを飲みましょう。
食事中に冷たい物を飲むと、胃腸の働きが抑えられてしまいますのでできるだけ常温以上の温度のものを飲みましょう。
身近にある冷たい飲み物には以下のものがあります。
ペットボトル飲料水:コンビニで手軽に手に入ります。なるべく常温以上のものをに飲みましょう。
コーヒーや緑茶:カフェインが交感神経を刺激し、熱の巡りを悪くします。常飲は避けましょう。飲むとしたらできればホットで飲みます。
牛乳:牛乳は体を冷やす働きがある為、温かくして飲みます。
炭酸飲料:コーラはカフェインが入っていますし、他の炭酸は糖がかなり含有していますのでできるだけ避けます。
アルコール:アルコールは、ビール、サワー、水割り、カクテルなど、冷たいお酒は1杯ぐらいでやめておいた方がよいでしょう。飲むなら、常温のワインや日本酒、もしくはホットワイン、お湯割りなどがお勧めです。
お勧めできる飲み物は以下のものがあります。
白湯:白湯は、水を沸かして飲むだけで、手軽に飲め、また何も成分が含まれていませんので、安心して飲めます。いつでも飲んでも構いませんが、朝目覚めた時や寝る前に飲むと副交感神経が刺激され、熱の巡りが良くなります。
葛湯:葛は、マメ科のつる性多年性の植物で、その根は「葛根」と呼ばれ、漢方薬に使われています。葛には、血行を促進し体を温める効能があります。お湯と一緒に飲めば効果が増強されます。
2.漢方薬
漢方薬は、中国伝統医学の一つで、中国伝統医学の理論に基づいて、植物、動物、菌類、鉱物などの天然の物を組み合わせて作られた薬物です。
冷え症に使われる代表的な漢方薬には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などあります。
詳しい説明は以下のページを参考にしてください。
この記事の執筆者のプロフィール
伝馬町鍼灸院 院長 川添登
昭和37年、10月5日生まれ。製薬会社の営業職に勤務していた頃、ストレスから軽い精神的な病にかかり、指圧や鍼灸施術を受け西洋医学とは違った角度からみる東洋医学に興味を持ち、27歳の時に鍼灸の専門学校に通う。
3年間の学習を終え、平成5年にはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得後、豊川で開業しながら様々な技法を学ぶ。
平成16年に現在の豊橋に引越しをして、皆様の健康の回復、維持、増進のお手伝いをしている。
家族:妻と娘の3人暮らし
趣味:読書・気功体操・自然歩道散策・魚釣り
好きな言葉:継続は力なり
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