当院のお灸施術について

このページでは、当院のお灸施術について説明します。専門用語も出てきますので多少理解しにくい箇所もあるかと思いますが、できるだけわかりやすいように説明いたします。1.から8.までは、当院のお灸術の理論の基礎となっている部分です。当院のお灸施術の実際は9.からになります。

1. お灸施術とは?

手三里にお灸

お灸施術とは、術者がお客様の皮膚を術者の指で直接触れ、火をつけた「もぐさ(ヨモギの葉から作られます)」を皮膚に直接置く、もしくは物や空間を介在して生体に温熱刺激を与えることで、生体の反応を利用して健康の回復、維持、増進する中国伝来の療法です。

 

当院のお灸施術は、私が1993年(平成5年)にはり師、きゅう師、あん摩・指圧・マッサージ師の国家資格を取得して以来、体験と知識に基づいて築き上げた全くのオリジナルの療法です。

 

日本の鍼灸の歴史を振り返ってみても、6世紀に中国から鍼灸が伝来後、多くの先人たちはその時代に合わせて独自の療法を創意、工夫をしながら考案してきました。現在の鍼灸業界は西洋的なものから東洋的なものが混在してたくさんの流派があり、それぞれが研鑽を積んでいます。

 

鍼灸業界の流派は鍼施術が主体のものが多く、お灸が主体の流派はほとんどありません。私がお灸施術にこだわっているのも、そうした現状から少しでも伝統のあるお灸施術の可能性広げ、社会に広めたい思いの1つの現れでもあります。

 

鍼灸は元々東洋医学ですが、業界も西洋医学的な「科学的根拠」に基づく研究が進んでいます。私のお灸施術はあくまでも東洋思想・哲学的な観方に基づくもので「直観的」でもあります。

 

鍼や灸(もぐさ)は「物」であり、西洋医学も東洋医学もありません。鍼灸師が科学的根拠に基づく鍼灸施術ならそれは西洋医学であり、東洋思想に基づく鍼灸施術であれば、それは東洋医学といえるのではないでしょうか。

2. 東洋思想とは

では、東洋思想とはどのようなものなのか、説明します。東洋思想の原点は古代中国の思想に置き換えられます。

その大元なるのが「易経」です。「易」というと「占い」を連想する方が多いでしょう。「易経」は、東洋の漢字文化圏の思想の根底をなす格式高い書物でもあります。

 

易経は、私たちの住んでいる宇宙は、見える世界が見えない世界の力で成り立っていることを原理としています。五感で感じ取れない「精気」という宇宙の力を前提として、それが物を生むという理論で世界観を生み出しました。

 

東洋思想は、この見える世界と見えない世界の両方を観るのが根幹です。

3. 易経について

鍼灸治療のための易経入門

(1) 易経の特徴

易経は今から3千年以上の前、中国の殷という国から始まり、様々な体験を経て今日至っています。

易経の特徴は、以下の4つがあげられます

変易宇宙の森羅万象は止まることなく変化し続ける

不易変化し続ける中を変わらぬ一定の法則が貫いている

易簡宇宙の森羅万象は結局陰陽の二文字に集約される

中庸を重んじる中庸とは、偏りがなく過不足のない調和のとれた状態を重要視する

 

これを私たちの身体に当てはめてみると

私たちの細胞は常に新陳代謝により変化し続けている

恒常性維持(ホメオスタシス)働いて健康状態が保たれている

自律神経の交感神経(陽)、副交感神経(陰)の2つの神経の調和で成り立っている

身体は交感神経と副交感神経系のどちらでも優位なものではなく、状況に応じて常に発揮できる状態が健康である

となります。

(2) 物体(身体)は気でできている

易経の「繋辞伝(上)」に「精氣爲物、遊魂爲變」という言葉が出てきます。

 

これは「混じり気のない純粋の元気(氣)は凝集して形を作り、いずれその元気(魂)は衰えて浮遊し、形を離れて、形は変わる」というも意味です。

 

これは「日常的に目に見える物は、すべて目に見えない元気(気)によって作られている」

という意味です。

 

私たち人間に当てはめると「目にみえない生命(精気)が私たちの身体を作り、死ぬと形はなくなる」ということになります。

(3) 太極(たいきょく)について

太極

易経の「繫辞伝(上)第4章」に「是故易有太極(この故に易に太極あり)。是生両儀(これ両儀を生ず)。両儀生四象、四象生八卦(両儀は四象を生み、四象は八卦を生ず)

という文章があります。

最初の「太極」ですが、「これは見える世界が見えない世界の力で成り立たせている大元」という意味です。

易経では、これを1本の棒(陽の爻)で表現します。この背後には目には見えない陰が働いています。

太極は両儀、つまり陰と陽に分かれる以前の姿で世界万物の生じる根元、宇宙の本体、天地のまだ分かれていない以前、万物の存在の始まる瞬間、存在する物の動き始める時、すべての事物や事象の始まり、精気、生命という意味です。

(4) 陰と陽について

太極から陰陽が生じる

是生両儀」の両儀が陰と陽のことで、それらは太極(万物の根源)から生じた二極。太極が2つのものに分離したものではありません。

現象と呼ばれる物事には必ず両面、両性がありこれを「陰」と「陽」といいます。

私たちの見える世界はこの陰と陽の両面からできているということでもあります。たとえば、天地、腹背、男女、上下、左右、前後、明暗など同じ性質である物の全く正反対として同時に存在するもののことを言います。

(5)四象と八卦について

易経八卦

易経で「両儀生四象 両儀生四象、四象生八卦」とありますが、陰と陽がさらに陰と陽に分かれ八卦となり、この八卦を重ねることで森羅万象が成り立つことを意味します。

 

つまり、森羅万象は陰と陽の調和で存在しているということになります。

4. 易経と現代物理学

宇宙

ダークエネルギー

易経は現代物理学にも共通しています。

 

現代物理学は「宇宙は何でできているか?」「宇宙の法則とは?」「物質の本質は何か?」などを研究する学問です。

 

現在のところ宇宙で一番小さい物質は素粒子と呼ばれています。しかしながらこれはまだ物質の最小物ではない可能性があります。

 

私たちが認識している宇宙は、138億年前に誕生しました。そして、現在でも加速膨張しているといわれています。この加速膨張させているエネルギーはまだ解明されていませんが、宇宙を加速膨張させるダークエネルギー(暗黒エネルギー)というものが存在しているといわれています。

 

このダークエネルギーこそが物質を作る大元ではないかといわれています。このダークエネルギーが易経で言われる太極になるでしょう。

宇宙を構成する要素は、恒星や惑星など目に見える普通の物質が4.9%、観測はできていませんが、理論上存在すると推定されるダークマター(暗黒物質)が26.8%、そしてダークエネルギーが68.3%と言われいます。宇宙はまだ95%は解明できていません。

宇宙はまだまだ謎だらけです。

5.東洋思想と東洋医学

中国医学思想史

ここでいう東洋医学は中国伝統医学を指します。東洋医学は中国の伝統的な思想に基づいた理論で構成されています。

(1) 鍼灸における伝統的な医学書

黄帝内経(素問・霊枢)、難経

鍼灸では、以下の伝統的な医学書から現代まで受け継がれています。

① 馬王堆漢墓医書:紀元前200年前のお墓から出土。「陰陽十一脈灸経」「足臂重一脈灸経」など経絡の原型が記されている。

② 黄帝内経:中国で最も古い医学古典。2000年ぐらい前に成立したと考えられている。黄帝内経には素問と霊枢がある。

(1)素問:根源に対する問答を意味し、生理、病理、診断、治療、養生法などが記されている

(2)霊枢:主として鍼医学として基本となる身体の働きや組織、また鍼の具体的な運用法などが記されている

難経:黄帝内経の難解な部分を問答形式で記されている。

 

(2) 天人合一論

天人合一

天人合一論とは、天(宇宙や自然)の働きと人間の活動、営みは同じものだという考え方です。私たち人間も宇宙、自然の一部であり宇宙(自然)の法則からは逃れられることはできません。

宇宙の法則に逆らう日常生活習慣は病気を生み出し、従う生活は健康を生み出します。

また宇宙を大宇宙とみなし、人間を小宇宙とみなし、両者は同じものだという考えでもあります。

(3) 気の思想

葦毛湿原

これは、私たち人間も見えない「気」からできている思想です。父親と母親の精気を受けて一つの生命が始まります。これは見えない気の力(太極)が働いてこそ生命が誕生します。そして、形を得た生命はある程度の時間、空間を生き、また見えない気の不足により生命を終えます。

 

お灸施術への応用=精気(生命)を意識=心身全体に影響を与えるツボを選択、1か所のツボのみ選択

(4) 陰陽論

太極図

すべての物事や事象は天地、上下、左右、前後など「」と「」の対立するの2つに分類され、お互いが過不足なく補い合いながらバランスを取り合って存在しています。分けるのではなく常に一体化しています。

陰は静的、陽は動的なイメージがあります。陰陽の相互関係には、以下の特徴があります。

① 対立と互根(依存):陰と陽は上下、左右、前後など相反する属性で成り立ち、どちらか片方だけでは成立しない

② 対立と制約:陰と陽は対立はしますが、お互いが過剰にならないように抑制する働きがあります。

③ 消長と転化:消長は、陽が増えると陰が減る、陰が増えると陽が減るように互いが増減しながらバランスを保つこと。転化は、陰陽のどちらかが、一定の程度・段階を過ぎると反対側に転じること(陽極まれば陰転、陰極まれば陽転

④ 可分:物事は条件によって無限に陰陽に細分化することができる

 

鍼灸施術の応用=上下、前後、左右、虚実、補瀉、表裏、寒熱=バランスを整える

お腹の症状に対して背中のツボを選択、顔面の症状に対して手足のツボを選択、手足の症状がある反対側のツボを選択

(5) 五行論

五行の成り立ち

五行論

もともと宇宙を構成する5つの材料、物質「木・火・土・金・水」の5種でこれらが互いに関係する。太極から陰陽の2相ができ2相からさらに2相が作られます。太極を大元の「土」として老陽「火」、少陰「金」、少陽「木」、老陰「水」が派生します。

五行の関係性

五行の関係性

五行の相生・相克・相乗・相侮関係「木・火・土・金・水」の5種の素材を循環的な産生、制約関係を理論にしたものです。

相生:1つの素材が別の素材を生み出す循環的な関係。木生火、火生土、土生金、金生水、水生木。生み出す素材を「母」生み出される素材を「子」とも言う

相克:相互に制約し合う関係。木克土、火克金、土克水、金克木、水克火。

相乗:相克が過剰に起こっている異常な関係。克する素材が強すぎる、克される素材が弱すぎる

相侮:相克が反対の方向に起こる異常な関係。克する素材が弱すぎる、克される素材が強すぎる

 

お灸施術の応用:「虚(不足しているもの)すればその母を補い(足す・増やす)、実(有り余っているもの)すればその子を瀉す(引く・減らす)ツボを選択する

(6) 蔵府論

臓象論

蔵象は、東洋医学で言われる「内臓」のことです。

東洋医学では、内臓を単なる物質的な物だけではなく、生理的、病理的、精神活動を含めた、それぞれ固有の働きを持ったものとしての観方をします。「象」とは、外側から観察できる生理的、病理的な現象をいいます。

蔵府は、蔵と府に分けられ、蔵には、肝、心、脾、肺、腎、心包(六蔵)、府には、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦(六府)が配属されます。

 

心包と三焦について

通常、内臓を表現する時は「五臓六腑」といいますが、六臓六腑とする場合は、六臓目は心包、六腑目は三焦となります。

心包を五臓五腑全体を包む三焦と表裏一体の「膜状の臓」と観ることも可能で、特に鍼灸での心包・三焦両経絡の表裏(陰陽)関係(経絡のところで説明)を考慮すれば、六臓六腑も可能となります。

現在、内臓は臓腑として漢字で表しますが、東洋医学の古典では、使われていません。東洋医学で言われる内臓は、現代医学の実体よりも精神を含めた幅の広い生理機能を有しているため、蔵府と表示します。幅広い生理機能の説明はここでは割愛します。

 

お灸施術の応用=それぞれの蔵府に影響を及ぼすツボを選択

(7) 経絡論

正経十二経

経絡は、気血の通り道として蔵府と身体各部及び、体表を繋がる通路の役割を果たします。内側は蔵府と繋がり、外側は体表に繋がります。人体の縦方向に走る経脈と身体各部に広く分布する絡脈からなります。蔵府と繋がりをもつ経絡は十二正経と呼ばれ、気血が手太陰肺経から足厥陰肝経の経絡を循環を繰り返します。

経絡は以下の特徴があります。

① 内臓や筋肉、皮膚に気血を巡らせ、身体の健全な生理活動を行います。

② 気血の過不足などによって病気の生じる所にもなります。

③ 診断や施術を施すところでもあります。

 

経絡の構成は図のようになりますが、特に重要視されているのが正経十二経脈、任脈、督脈です。

正経十二経:陰と陽の経絡の2つに分けらます。陽経は、陽明、太陽、少陽に分けられ、陰経は、太陰、少陰、厥陰に分けられます。また、手をめぐる経脈と足をめぐる経脈があり、手の三陰経、足の三陰経、手の三陽経、足の三陽経の計12本あります。陰経は六蔵に繋がり、陽経は六府に繋がって各陰経と各陽経は表裏関係にあります。

 

任脈・督脈:任脈、督脈は身体の正中線にあり、任脈は前側、督脈は背中側にあり、他界に頭頂(百会)、会陰にて繋がっています。

 

お灸施術の応用:蔵府に関連した経絡上にあるツボを使用する

(8)経穴について

経絡と経穴

経穴はいわゆる「ツボ」と呼ばれる部分です。経穴を指で触れてみると凹んでいる、圧痛がある、ざらついているなど周りの皮膚と違った感覚があります。

経穴は身体のなんらかの反応を起こしている部分です。WHO(世界保健機構)で認められている経穴は361ありますが、実際は名称のない経穴(阿是穴:あぜけつ)もあり全身に無数に存在します。

経穴は鍼灸施術では、診断、施術、効果の判定部分でもあります。

お灸施術への応用

科学的根拠に基づくツボ=阿是穴(圧痛点、反応点、トリガーポイントなど)、症状に対して経験的な観点から使われるツボとして選択

6.演繹的思考と帰納的思考

演繹的思考法と帰納法的思考法

物事を論理的に考える方法に演繹的思考法と帰納的思考法があります。

 

① 演繹的思考法:最初に結論的に至る基礎的判断を置く思考法で、そこからすべてが始まっているという考え方です。

すべてのものに生命があることを大前提とします。その生命に立ち返れば病気はなくなるであろうという考え方です。自然と一体化した生き方を理想とします。

 

 帰納的思考法:将来目標となる普遍的なものに焦点を置く思考法で、その解決、発見のために様々な分析や実験を繰り返し、そのための具体的なデータを蓄積して行く考え方です。

生命を人間の手で創りたいのが科学の究極的な目標で、それの仕組みが分かれば病気はなくなるだろうという考え方です。

 

この考え方から東洋医学は演繹的思考法西洋医学は帰納法的思考法といえるでしょう。

 

7.象徴(象)と指標について

腹診

象徴(象)とは、目や耳などで直接知覚できない物を何らかの類似によって物や形にしたもののことを言います。

また、指標とは、物事を判断したり評価をするための基準となる目印のことを言います。

 

東洋的思想による鍼灸は、鍼やお灸の刺激を利用して、目に見えない「気」の変化を起こさせ健康に導く療法です。見える身体そのものは生命の象徴とみなします。そのため、目に見えない「気」の変化を感知するために身体のある部分を指標として決めておきます。そして鍼灸の刺激の前後に指標がどれぐらい変化したかをチェックすることで刺激の効果を判断します。

 

そこで当院では、お腹を1番重要な指標にしています。

8.なぜお腹を1番重要な指標にするのか?

難軽十六難の腹診

お腹は身体の中心であり、また変化の現れやすい場所です。

腹診は、中国が大元ですが、日本に伝来して以来、日本人が発展させたといわれています。

中国伝統医学の古典の書物である難経の十六難と五十五難に、腹部について書かれている箇所があります。

難経十六難では、上記の図のように五蔵と病の関係を、お臍を中心として配当しています。

難経五十五難では、腹部の異常「積聚(しゃくじゅ)」という言葉で説明しています。

積聚について

積聚は、お腹の異常のことです。積聚は、以下のような特徴があります。

①腹部の異常には、積と聚の2種類ある

②積と聚はいずれも「気」でできている

③「気」には陰陽があり、積を陰の気、聚を陽の気とする

④積は深い所にあり判断が容易だが、聚は浅い所にあり移動しやすく判断しにくい

 

東洋医学では、易経に基づいて、すべては太極に基づいているという思想から一部分が全体を表しているとみなします。

腹部の状態は全身の状態を現わしていると捉え、腹部にある異常が体全身の異常を現わしていると考えます。

施術の効果を確認する場所は様々ありますが、身体全体にどれだけ影響を与えたかをチェックすることのできる指標として腹部が1番変化しやすく、わかりやすい理由から腹診を最重要視しています。

9.当院のお灸施術について

腹診

(1)当院のお灸施術に対する考え

当院では、上記1~8を踏まえ、以下の考えに基づいてお灸施術を行っています。

① 当院では東洋思想的な考えに基づいたお灸施術を行っています。

② 身体は常に新陳代謝を繰り返し変化してゆく流動的存在です。その変化し続けている身体に対して、病名に対する施術ではなく、個々の状態に合わせたヒトに対して施術を行います。

③ 身体の異常は身体全体のバランスの乱れによって起こっていますので症状に拘らず、身体全体に対する施術を優先します

④ お腹など、身体の指標となる部位を確認しながら施術を進めてゆきます

(2) 当院でにおける病の根本的原因(冷え)とその改善

東洋医学では「冷えは万病の元」と言われます。

当院では、この「冷え」を病の根本的原因として捉えています。

冷えは万病の元の理由

生命曲線、余命表

当院では「冷えは万病の元」の理由を以下のように捉えています。

「冷え」を広義の「冷え」と狭義の「冷え」と分けて考えています。

①広義の冷え=生理的な冷え

上記の図は、厚生労働省で平成4年3月2日に発行された第3回生命表(完全生命表)の中にある生存曲線、平均余命です。

これらは当たり前かもしれませんが右に移行する(年を重ねる)にしたがって数値(生命力)が減少してゆきます。

これは生理的な冷えで加齢によるものです。当院ではこれを「広義の冷え」とします。

生存曲線

②狭義の冷え

私たちは生きている間に、様々なストレス、過労、運動の過不足、食事の不摂生、休息の過不足など日常生活習慣が乱れていることがあります。

日常生活習慣が乱れた生活を送り続けると、私たちは生命エネルギーの消耗を速めてしまい、その習慣を続けることで早く死を招きます。

これは、日常生活習慣はよくないために起こるもので、これを「狭義の冷え」といい、病的な冷えを表します。

お灸で冷えを改善

生存曲線 冷えを改善

当院では、お灸を使って体表にあるツボに対してお灸の熱を与え、病的な冷えを改善し、できるだけ生理的な冷えに近づけて、あらゆる症状を改善に導きます。

(3)経穴・ツボの選択

太極から六十四卦と選択

当院のお灸施術では、経穴・ツボを易経の分類に合わせて下記のような目的で選択します。

 

太極(精気):精気に影響を与える目的で経穴を選択する

両儀(陰陽):身体の上下、左右、前後に足して陰陽のバランスを整える目的で選択する。上半身ににある症状を下半身の経穴で、右側にある症状を左側の経穴で、背中側にある症状を背中側の経穴を選択

四象(蔵府):腹部を五行のカテゴリー、背中を五行のカテゴリーに分けて経穴を選択

八卦(経絡):蔵府に関連した・経絡に影響を与えることを目的として経穴を選択

64卦/無限卦(経穴・ツボ):痛みなどの異常を感じている箇所にある経穴を選択

10.お灸施術の手順とその目的・根拠

当院のお灸施術の手順とその目的・根拠を説明します。

 

(1)問診

問診カルテ

当院に初めて来院された方には、まず初めに問診カルテに記入をしていただきます。

問診カルテには、

お名前、住所、電話番号、生年月日、性別、身長・体重、当院を知った広告媒体、職業、今までの代替医療の経験、その時の症状と経過を記入していただきます。

その後、

①現在の1番のお悩み、その他のお悩み

②いつごろからその症状を感じるようになったか?

③その症状の経過として、だんだんとよくなっているのか、変わらないのか、悪化しているのか?

④その症状をどんな時に強く感じるのか?

⑤その症状はどんなことをすると軽くなるのか?

⑥今回の症状は初めてなのか?

⑦思い当たる原因は?

のところまで記入していただきます。

そのほか、通っている医療機関や服用しているお薬、ほかに持病となっているもの、過去に経験した病気、家族の方の病気経験、食欲、便通、睡眠、飲酒・喫煙習慣、運動習慣、女性でしたら生理関係を対話式でお聞きいたします。

目的

問診は、お客様の症状の把握とその原因となる日常生活習慣の把握です。それにより、お客様の症状の状態が急性なのか、慢性なのか、病状は軽いのか重たいのかなどを把握します。

(2)当院のお灸施術の方針の説明

当院のお灸施術の方針

次に当院のお灸施術の方針について説明します。

どんな道具を使うのか、何を目的してお灸施術をしているのかを簡単に説明します。

目的

初めて来院されたお客様には、当院でどんな道具を使うのか、またどんな目的でお灸施術をするのかを理解していただき、安心してお灸施術を受けてもらうためにご説明します。

(3)着替え

着替え

次に、着替えをしていただきます。着替えはこちらでご用意させていただきます。男性、女性とも着替えをしていただきます。

男性は、上半身は裸になっていただき、専用のパンツに着替えていただきます。女性は、上半身、下半身の両方を着替えていただきます。

目的

お灸は肌に直接置いて行いますので、肌をだしやすいように着替えをしていただきます。また、火を扱いますのでお客様の衣服を燃やさないためにも着替えをご用意しています。

 

(4)体温と脈拍の測定

体温と脈拍数の測定

当院では、施術前後に、脇腹、腹部(中脘)、頭部(印堂)、手足(合谷、太衝)で体温測定を行います。脇腹の体温を測定しながら脈拍数を測定します。

目的:施術前後の体温を比べることにより、身体の熱の巡り具合を検査します。施術前後の脈拍数を測定することで、心身の緊張感、身体の内部の冷熱などを検査します。

(5)手足、腹部の触診

体温、脈拍数の測定後、お客様の足や手、お腹を触診します。その後、脈診、舌診をします。お腹は温度差だけを診ます。

 

目的

実際に足の指、甲、すね、膝、手の指、甲、腕を直接触れることで、体温の左右差を診る事で冷えの程度を確認ます。この時の腹診は、術者の手のひらでお腹の部位の温度差を診るだけです。

(6)脈診

脈診

ここでの脈診は、脈拍を診るのではなく、左右の脈の脈の勢いの差はないかを診ます

 

目的:脈診は、東洋医学では詳しい診方がありますが当院では、脈の左右差を診て身体の冷えの偏りを診るだけにとどめています。

(7)舌診

舌の状態を診ます。

目的:舌の大きさ、色、苔、潤い、つやなどの状態を診て、冷えの状態を診ます。

(7)お腹(中脘)のお灸施術

お腹(中脘)のお灸施術

最初にお臍とみぞおちのほぼ中間あたりにある中脘へお灸を施します。

 

目的

気の通り道である経絡の流れは中脘から始まり、中脘に終わるといわれます(依拠:図解十四経発揮 本間祥白 医道の日本社)。経絡は全身を巡っていますので、中脘にお灸施術をすることで全身に働きかけることができます(太極へのアプローチ)。

 

 

(8)腹部の触診

腹部の触診

腹部を五行(5つのカテゴリー)にわけ、さらに圧痛の出やすい場所(番号のある所)を術者の指で軽く押し、どこが一番圧痛が強いか確認します。

 

目的

中脘へお灸を施した結果、最初に現れる「積聚」がどこにあるのか確認します。この時点での圧痛はまだ「積」と「聚」が混合しています。

(9)足三里へのお灸施術

足三里へのお灸施術

足三里の左右を触診し、反応の大きい方を選んでお灸施術をします。

根拠・依拠

足三里は足の陽明胃経の経穴の一つで、胃経は五行で言えば土であり、また経穴の性質からいっても土になります。また五蔵の栄養は、みな胃の府の水穀の精気によって賄われているため、胃は五蔵の根本であるといわれています(依拠:現代意訳 黄帝内経素問 東洋学術出版社 玉機真蔵論篇)。

目的

足三里にお灸施術をすることで五臓全体に働きかけることになります(五蔵へのアプローチ)。

五蔵に全体に働きかけることで陽の気である「聚」と陰の気である「積」を分離します。

(10)腹部の触診

腹部の触診

足三里にお灸を施したのち、再度圧痛の位置を確認します。この時の圧痛は、足三里へお灸を施した結果、陰陽の入り混じった「積聚」うち、陽の気である「聚」が取り除かれ、陰の気である「積」の位置が決まり、背中へのお灸施術部位が決まります。例えば上の図では、お臍の上にあたり(7番)の「脾」の部分に「積」があります。

根拠

足三里のお灸により、陰の気を持つ五蔵が強化され、表面にある陽の気の「聚」が消失し、五蔵のうちどの蔵に「積」があるのかが確認できます。

目的

足三里へのお灸施術の結果「積」をあぶり出し、背中でのお灸施術の部位を決める。

 

 

伝馬町鍼灸院