「今回は前回に引き続いて高血圧のお話で、日本高血圧学会が挙げている6つの生活習慣を見直すポイントのうち3~6番目の、適正体重の維持、運動療法、アルコール制限、禁煙についてだね。」
その予定だったけど、今回は冬場によく起こるヒートショックについてお話することにしたんだ。ちょっと長くなるけど。
「それは、いいけど。ヒートショック?何それ?聞いたことないなぁ。」
ヒートショックとは、急激な温度変化が体に及ぼす影響のことだよ。この言葉はもともと不動産用語なんだ。
「なんで、不動産用語が私たちの健康に関係してるの?」
私たちの体は、体温を一定に保つために、室内の温度の変化によって血圧を急に上げたり、下げたり、脈拍の速さを変えたりして血管にとても負担をかけているんだ。それが、心筋梗塞や脳血管障害につながる危険性がとても高くなるんだ。
「でも、みんなが室温の変化ぐらいで、心筋梗塞や、脳卒中になるわけじゃないでしょ?」
もちろんすべての人がヒートショックを起こすわけではないよ。でも、
1.65歳以上である。
2.高血圧や糖尿病、動脈硬化のある人。
3.肥満気味、睡眠時無呼吸症候群のような呼吸に問題のある人、不整脈がある人。
4.自宅の浴室に暖房設備がない。
5.一番風呂に入ることが多い。
6.熱いお風呂が大好き。
7.お酒を飲んでからお風呂に入ることがある。
このような人は注意が必要だよ。特に高齢者。ヒートショックは、高齢者が家庭内で死亡する原因の四分の一を占めるんだよ。
「そんなに!で、そもそもヒートショックを起こす原因って何なの?」
ヒートショックを起こす原因は屋内の温度差だよ。暖かい部屋から廊下や別の部屋に入るとゾクッとするよね。これは、温度差によって、血圧や脈拍の変動を起こして心臓により多くの負担をかけているんだよ。一つ質問だよ。ヒートショックを起こしやすい場所ってどこだと思う?」
「え~と、トイレ、洗面、浴室かな?」
そのとおり。日本の家は、居室は南側、トイレ、洗面、浴室、台所は北側に設置することが標準的で、なかでもトイレや浴室は陽の当たらない所が多く、居室と比べると温度差が6~10℃になるんだよ。
特に入浴中に亡くなる事が多いことがわかってるんだ。寒い浴室や脱衣室に入ることで、急激に血圧や心拍数に変化を与えるため、立ちくらみや転倒したりして溺死したり、熱い湯に長く入っていると血圧が急に下がり、脳梗塞や急性心筋梗塞を起こしやすくなるんだよ。それに一番風呂もからだに良くないって、知ってた?
「ううん、知らない。」
寒い時期の一番風呂は、浴室が十分に暖まってないからだよ。家族が入浴した後なら浴室も暖まっているので高齢者の方に負担をかけなくて済むよ。水道水に含まれる塩素もビタミンCと結びつく性質があり、体内の酸化作用が働き、体のビタミンが失われることも一番風呂は良くないらしいよ。そんなときは、タオルでかき混ぜたり、レモンなど柑橘系をお風呂に入れると良いらしいよ。
「へぇ~、そうなんだ。入浴する私たちの血圧はどのように変化するの?」
それはね、
寒い脱衣所や浴室に入る → 血管が収縮し血圧が上昇 脱衣や体を洗う → 体を動かすことにより血圧が急上昇 浴槽につかる → 体が温まることにより血管の拡張と循環血液が改善され、血圧が急降下
風呂からあがり脱衣所へ → 血圧は上昇 服を着る → 体温が保たれるので血圧は下降
と言われているよ。健康な人には問題ないようでも、高齢者や血圧の高い人にとっては不整脈や心臓停止が起こることもあるんだからね。
「じゃあ、入浴が命取りになる可能性も高くなるんだ。なんとか対策はないの?」
そうだね。ヒートショックを防ぐための対策は非常に大切だね。入浴する前に、次のことを実践しょう。
1. シャワーを使って浴槽のお湯を溜める:シャワーで高い位置から浴槽にお湯を溜めることで、シャワーの蒸気で浴室全体を早く暖めることができる。
2. 寒い時期は、脱衣所と浴室を十分暖かくしておく:脱衣所が寒い場合は、暖房器具を置く。浴槽にお湯が溜まっている場合は、風呂に入る前にしばらく浴槽のフタを開けておく。浴室の床にマットやスノコを置く。
3. 風呂の温度は、38~40度くらいの低めに設定する:入浴温度42~43度の熱いお湯は心臓にかなり負担がかかる。
4. 高齢者や高血圧の人は一番風呂を避ける:一番風呂はまだ浴室が暖まっていないので危険。家族が入った後は浴室内が温まっているので、続けて入るようにする。
5. 食事後すぐの入浴は避ける:食事のすぐ後は血液が消化器官に集まるので入浴は食後1時間以上たってからにする。
6. 入浴前に降圧剤やアルコールは飲まない:アルコールには血管を広げる働きがあるので一時的に血圧を下げる。降圧剤も血圧を下げる働きがあるので、入浴前の服用は避ける
7. 入浴前後にコップ1杯の水分補給をする:入浴による発汗で体内の水分が失われるのを防ぐ。
8. まず、かかり湯をする:手や足などの心臓に遠いところからかけ湯をして身体をお湯に慣れさせる。
9. 全身浴よりも半身浴にする:高血圧、高齢者、心臓の弱い人の体には、全身浴はかなりの負担がかかるので、半身浴やかけ湯を組み合わせる。
10.高齢者や心臓病の人が入浴中は、家族が時々声を掛けチェックをする:もしも、家族が浴室で発作を起こした時、発見が遅れると非常に危険な状態になる。高齢者が一人で入浴する時は家族が時々声をかける。
11.浴槽から出る時、急に立ち上がらない:急に立ち上がると血圧が急低下し、立ちくらみを起こす。湯船で失神して、溺死につながる危険性あり。
「対策としてたくさんあるんだね。でも万が一、家族が入浴中に意識を失ったらどうするの?」
まずは、あわてないこと!そして、次のことをすぐに行うことだね。
1. 家の中に他の家族がいる場合は、大声で家族を呼び、助けを求める。
2. 意識を失って風呂の中に溺れる場合があるので、風呂の栓を抜く。
3. 体を水中から引き上げ、風呂から出す。顔面が水没している場合は窒息する恐れあり。
4. 人工呼吸を試みる。
5. 体をタオルや毛布でくるんで、体を暖める。
6. 119番へ電話し、病院へ運ぶ。
「トイレでのヒートショックの対策を教えてよ。」
「トイレでのヒートショックの対策を教えてよ。」 日本の家屋のトイレは北側にあることが多いし、高齢になると夜間トイレに行く回数も増えるから トイレ対策も必要だね。それには
1. トイレに近い部屋を寝室にする
2. 小型の暖房機を置く
3. トイレに窓がある場合は、カーテンをつける
4. いきみすぎに気をつける。
今回は、これでおしまい。
お電話ありがとうございます、
伝馬町鍼灸院でございます。